先日、投資の神様と呼ばれる著名投資家のウォーレン・バフェット氏が、保有するエアライン各社の株式を売却したことが話題になりました。

世の中の長期トレンドを見定め、10年超の長期投資の姿勢で知られる同氏にとって、エアライン株はお気に入りの銘柄と言われていたようです。

5月3日付の日経新聞では、「外出制限が人々の行動に与える影響は分からない。3~4年後に、昨年までのように飛行機に乗るようになるのか見通せない」との悲観的な見方を示した同氏のコメントを紹介していました。  

長期トレンドを見定める同氏の視点では、国境を越えた「人と人とのつながり」、「人の往来」が強まっていく傾向、つまりグローバル化の長期的な流れは逆行しないという強い確信があったことで、エアライン業界への強気の姿勢があったのでしょう。

その同氏がエアライン株を売却するということは、一体、どのような思考が裏にあったのでしょうか。

オンライン上でのコミュニケーションに代替されるように、今後は物理的な「人の往来」の増加は見込めないという判断なのでしょうか。
つまり、コロナショックにより、いよいよ航空業界の長い成長は終わりを告げる、という考えなのでしょうか。

私は、コロナ後の時代の数年間という短期的なタイムラインでは、物理的な「人の往来」が増え得ない状況もあり得ると考えます。

一方で、すべての「人の往来」がオンライン上のコミュニケーションに代替されるということは考えにくいと想定しています。

ただし、物理的な「人の往来」が、いつの時点で、増加に転じていくのかについては、全く予想ができないと考えます。

リーマンショック時に、長期トレンドに立ち、本来の価値に比して過度に下落していた銘柄への多額の投資を即断したことで知られるバフェット氏です。

米国ネブラスカ州のオマハ市に居を構える同氏は、その知性と先を見通す力から、「オマハの賢人」と評されることでも知られています。

一部のメディアでは、今回のエアライン株の売却判断も、同氏による長期トレンドの予測によるものだという記事を目にします。

しかし、私は、今回の同氏の判断は、長期トレンドを見極めることができたからではなく、長期トレンドは見極められないと同氏が判断したから、一時的に売却を決断したのではないかと考えます。

コロナショックの影響が、どこまで、どの程度の期間及んでいくのか、同氏のような賢人にさえも想定し得ない状況だということではないでしょうか。

つまり、今回のバフェット氏の売却の決断は、エアライン株は買い(つまり、シロ)、あるいは売り(つまり、クロ)という、明確なシロ・クロの見極めによるものではなく、しばらく不透明な時代が続く(つまり、グレー)という判断があったと考えられます。

これは、政府がロックダウンを強行すればコロナショックは退治される(シロ)、逆に政府の判断が遅れれば感染による世の中の混乱が生まれる(クロ)、というシロ・クロの世界ではないということではないでしょう。

たとえ政府がどのような政策を取り入れても、たとえ世の中の一人一人が積極的に「新しい生活様式」を取り入れても、それにより、あっという間に状況が改善し、「シロ」の世界が瞬間的に到来するわけではない。自分たちの努力は「グレー」を「シロ」に近づけることはできても、当面の間は純白にはならない、ということではないでしょうか

しばらくの間、不透明な将来、つまり「グレー」な世の中が続くと予想されます。

一人一人が「グレー」を「シロ」に変えていく努力を継続すること。
そして、どんよりとした晴れ間の見えない「グレー」な世界を想定し、曇り空と前向きに向き合い、それをチャンスに変えていく意識が大切なのではないでしょうか。